ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
<< November 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
イーストンと春の風

 読書の楽しみと言えば、物語の大きなうねりに身を任せる喜びと、ディティールの小さな共感とか発見とか、くすぐったいような愛着が積み重なる感じの喜びと、大きく二つの楽しみがあると思う。

 たいていの本は、どっちかか、もしくはどっちかが強いものだと思うのだが、このイーストンのシリーズには、どちらの楽しみも存分にあって、なんだか困ってしまう。

 

 ここは、かぐわしの森。歩けばたちまちお腹がすいてくる。

 なぜなら、森のパン屋イーストンの焼くパンの匂いが、木々の間からしてくるからだ。

 ところがある日、イーストンのパンがうまく焼けなくなる。一緒に、ずっと仕事をしてきた小さなはね火のアチネが、動けけなくなってしまったからだ。

 

 かなしそうに、ひとつ、ほおっとけむりをはいた。

「だめなんだ。けさ、気がついたら、おいら、おどれなくなってた」

 

 仲間のため、そして自分の使命であるパンを焼く仕事を復活させるため、イーストンは森一番のものしり・ノムさんのところへ相談に行く。そして、アチネがおどれなくなったのは、春一番のせいではないかということになる。

 春一番を探すイーストン。そして、とうとう春一番を捕まえるのだが・・・・。

 

 アチネはやっぱりおどれない。

 イーストンは、自分の力を取り戻せないアチネと木の根元に黙って座る。

 

「夜の森がこわいのかい?」

 

 イーストンは、アチネを理解しているとは言えないのかもしれない。仕事のパートナーとはそういうものだ。しかし、共に時間を過ごし、同じものを見つめる。そして、仕事がうまくいくことを願い、相手を労わり気にかける。

 

 面白いのは、アチネが再び、おどりだせるのは、アチネ自身が、自分で自分をのせながら、おどってみることにチャレンジしかたらであって、わかりやすい環境も、わかりやすいきっかけも、ましてや、春一番をつかまえて何かが解決したわけでもないことだ。

 

 そんなものかもしれないと思う。アチネを救ったのは、すべての過程であり、物語であり、自分自身の思いなのだと思う。

 

 アチネというネーミングも好きだし、アチネの仕事を踊ると表現するセンスも好きだ。

「夜の森がこわいのかい?」というセリフも好きだし、イーストンとアチネの距離感、そしてこの物語の展開が好きだ。

 

 なんだか、これだけの好きが、絵物語の短い物語の中に詰まっているのだから、やっぱり好きだよなとしか言いようがない。

 是非多くの人に読んでほしい。                                            

 

 

 

 

 

                

     書籍データ 発行 出版ワークス 発売 河出書房新社 巣山ひろみ・文 佐竹美保・絵 2017.03

| 19:35 | 絵本 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| | - | - | - |









 
この記事のトラックバックURL

http://yukareview.jugem.jp/trackback/828