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コケシちゃん
 スイスから体験入学生がやってくる。

 くるみたちは、ヨーロッパからの転入生に想像を膨らませる。

 しかし、やってきたのは、京ちゃん、おかっぱでコケシ顔の日本人そのものの容姿だった。



 自己主張がはっきりしていて、いつも冷静な京ちゃんは、くるみを戸惑わせるばかりだ。

 出井くんは、いつも正しいような顔をしていると、京ちゃんが気に入らないらしく、なんでもかんでも突っかかって来る。

 くるみは、そんな出井くんも苦手。



 自分との違和感、そしてだからこそ気になるという感情。

 母を失った京ちゃんと、母に手間暇かけられることに飢えている出井くん。親への思いを、共通言語にみんなの根っこがつながっていく。



 日本では学校給食や掃除をなぜ子どもがするのだろうかという京ちゃんの疑問や、異文化を教えられることが、日本のことを悪く言われているきがして黙り込むくるみの気持ちなど、国際交流の第一歩で経験する、差別心にも似た摩擦を丁寧に描きながらも、語りすぎない物語が心地よい。

 自分の物語を抱えた登場人物の集合体が、一緒に何かをやりとげ、一緒にいることを選択していく物語だ。

  国際交流とか平等とか、子どもたちはこうやって、日常の中で、理論を超えた確かな何かをつかみ取っていくのだなと、 個人とは、集団とは、そういうものだと思わせてくれる。



 何よりも、日本の小学校のどこか茫洋とした空気のなかに、張り詰めた存在の京ちゃん・・・コケシちゃんが闊歩する緊張感が見事に描かれている。

 その緊張感が、理解できた喜びや乗り越えられた達成感に変わった時、それが友だちになれたということなのだということなのだと胸に迫るものがある。



 スイスの言語地域がでてくるのだけれど、くるみが最後、京ちゃんの手紙に書いたのは英語だ。

 このあたりが心憎い。コミュニケーションは、身近なところから、とにかく始めることに意味があるという信念を感じて爽快だった。

 景色を指定して絵葉書送ってこいって言われてみたいなとか思って、これは、最後にルガーノ湖の絵葉書があるはずと、裏表紙を探してみたけれどなかった。ちょっと落胆しながら、ルガーノ湖に思いを馳せる。

 カバーをめくったら、みんなで描いた絵があった。

私のがっかりも、素敵な絵も物語の開放感につながっている。

 何もかもこれで完結ではなく、ここから始まるように仕掛けてあるのだと思える物語である。




                  

               書籍データ 佐藤まどか 作 木村いこ 絵 フレーベル館 201411
| 21:35 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
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