ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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あめ・のち・ともだち
 さて、どこから評したものかと思う。

 

 ちょっと怖いと思っていたクラスメート、ゴウくんは、トモキの肩の傷を、カッコいいと言った。

 なんの、深い意味のない、転んでできた肩の傷。ドジでも、気持ち悪いでもなく、フォーレンジャーのイナズママークみたいでカッコいいと目を輝かせるゴウくんがいた。

 そこから急に近くなる二人。

 雨の日でも、ずっとトモキが来るまで公園で待っていたゴウくん。

 一緒に、新宿のフォーレンジャーの店に行こうと誘ってくれたゴウくん。

 だけど、ゴウくんは引っ越してしまう。トモキが会いたいと言っても、親たちは動いてくれない。

 やっと、やっとの思いで、トモキの誕生日にゴウくんがやってくることになった。しかし、その朝、ゴウくんのうちの車が動かなくなって・・・。

 飛び出したゴウくんはどこにいるのか? トモキとゴウくんは会えるのか?



 二人の切実な思いにくらべ、なんと親たちの呑気なことか。

 子どもと、親の時間の流れる速度の違いが見事に描かれている。

 

 そんな風に、思い通りにならないことがたくさんあって、子どもの時代というのは、親とは違う永遠の長さがあったなぁと思う。大きな理由もないけれど、ゴウくんとトモキの、闇雲に相手のことが好きで、凄いなぁと思っていて、友だちと言える純粋さが眩しい物語だ。



 難点もある。

 雨の中駆け寄ってきたゴウくん。新宿へのフォーレンジャーツアーはどうなったのか。

 尻切れトンボの場面転換に少し戸惑う。



 しかし、この粗さが、この作者のもつ魅力の一つとするならば、よくもまぁ、こんな状態で商業出版してもらったなと愉快な気分になる。この粗さのまま、この物語の飛躍を、もっと確かな魅力にできないものだろうかと思ったり、新人作家の処女作は、このくらいの勢いと欠点があった方が面白いと思ったり。



 実は、冒頭、どこから評したものかと言ったのにはわけがある。

 以前、この作家の、生原稿を読んだことがある。

 荒削りで、場面が飛躍し、なんだかヤッツケ感さえあるのに、恐ろしいほど魅力的だった。

 こんな作家が、自分の魅力を意識した作品を完成させてきたら、面白いことになるぞと心が躍ったことを思い出す。

 

 その作家が、とうとう出てきたのだ。

 それも、その欠点をそのままに、卵の殻を突き破って出てきたのだ。

 こんなにうれしいことはない。



 この作家が、自分の魅力を、欠点ではなく自分の武器にできる日がくるのかは、神のみぞ知る世界であろうが、とにかく、作家としての誕生を祝いたい。



  トモキとゴウくんが、明日を信じ、未来に起こるはずのことに何の疑いもなく心躍らせているように。

  私も、なんだかそんな気分である。




  



                 



              書籍データ 国土社 北原未夏子 作 市居みか 絵 201506
| 23:36 | 児童文学 | comments(2) | trackbacks(0) |
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本出して、いっぱい感想もらった。中にはうそくさいのもあったけど、涙ちょちょぎれるぐらい嬉しいのもいっぱいだった。
私は、この人の感想をたぶん一番待っていたと思う。

いっつもニコニコしながら、それはそれは独特な視点で、核心を突く。そしてあの流暢な話しっぷりで、聞く者を酔わす才能は天下一品。なのに私はいっつも首をひねってた。よくわかんな〜い。またしても、よくわかんな〜い。(えっ、もしかして私だけ?)でもさ、あたし、信じてるんだ。
| mikako | 2015/07/23 10:24 |
mikako様

北原未夏子は天才である。
初めて原稿を読んだ時から、その思いは変わっていません。
私が、もし、本当に読む目を持っているとするならば、誰もが北原未夏子の才能にほれぼれとし、嫉妬に狂う時が来るはずです。
本作だって、欠点はたくさんあるかもしれないけれど、久々に、新人作家の処女作らしい、絶対に既成の作家には感じない高揚を感じる作品でした。
こじんまりとした枠の中に、才能を押し込めたりしなかった国土社に心から敬意を払いたいと思っています。
モーツアルトのように自由に歌い上げてください。
いつか、時代か、北原未夏子の技術が、北原未夏子の才能に追いつく日が来ると思います。
そしたら、私は、偉そうに、
「最初から、私には分かっていた」
と、このコメントを証拠の品として提出することにします。
次の作品を、心から待ち望んでいます!
| ゆかちゃん☆ | 2015/07/23 21:01 |









 
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