ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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憤死
 綿矢りさの短編集。雰囲気も長さもまったく違う作品が収納されたおもちゃ箱である。
 良くも悪くも俗っぽい。
 でも、読者の側の俗悪さを引き出して、インパクトに変えているような計算も感じられて、意識してやっているなら、凄いなとも思う。
 どんな崇高な研究をしている人も、昼の食事時、名前しか知らない女優の不倫騒動のワイドショーに見入ったりしてしまうものではないだろうか。そして、そのくだらない受け答え、ありがちなフラッシュや涙が、興味も無いのに胸を離れないこともあるのではないだろうか。
 自分の中の、いったい何に響いたというのか。
 その事実自体が、ちょっと恐ろしく、何かがひそんでいるような気さえする。
 そんな作品群である。

おとな
トイレの懺悔室
憤死
人生ゲーム

 の4編が収録。
 私が一番気に入ったのは、表題作でもある「憤死」
 
 
小中学校時代の女友達が、自殺未遂をして入院していると噂に聞いたので、興味本位で見舞いに行くことにした。

 と、はじまるこの作品は、この一文に集約されている「え? それを友達と呼んでいいの? 」というあるべき論を超えた、女の子特有の友達の概念を見事に書ききっている。
 蔑みと、羨ましさ。自分に関係のない、相手の人生。劇場型の恋を、どこか絵空事のようにバカにしながら、それでも、好奇心から観察し、観察者である自分に赤裸々に手の内を見せる事実に対しての、相手への奇妙な尊敬。
 生命力と、意地の悪さ。天然の女の子を突きつけられて、こちらも居心地が悪くなる。なのに、どこか爽やかにさえ感じるのは、やっぱり、それが女子ってものではないの? と、こちらも、観察者としての喜びを享受できるからではないか。そして、飛び降りでもしなければおさまらなかったという、相手の、失恋への、もの凄いパワーを持った怒りそのものが、なんだか愉快だからではないか。
 結局、この作品は、このわけのわからない二人の、大真面目に向かい合っている、友情という名の自己愛と優越感を、あたたかく受け止めているのだ。

 とても読みやすい短編集なので是非読んでほしい。
 この俗っぽさの中の、確かな人間模様は、どんな有名女優のスキャンダルにも負けていないと私は思う。
 
 

        憤死
            書籍データ 綿矢りさ 201303 河出書房新社
| 23:43 | 一般書 | comments(0) | trackbacks(0) |
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