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天国の門 デジタル修復完全版
 今回初見である。
 なので、残念ながら、1980年劇場公開版との比較はできない。
 しかし、アメリカが、現在のアメリカとしてあるために通ってきた精神的史実を見せられたような衝撃は言葉にできない凄みがあった。
 素晴らしい映画だった。 

 1870年、ハーバード大の卒業式。
 前途、無邪気、若者らしいエネルギー、そして恋。すべてを謳歌する学生たちの、回る回るダンスと行進。
 ジム(クリス・クリストファーソン)は、大勢の学生に混じって総長の祝辞を聞き、ビリー(ジョン・ハート)は、新世代の到来の予感を感じさせる生徒代表の言葉を述べ、大人たちに眉をしかめさせる。
 時は流れて、20年後。
 彼らが住むワイオミングにはロシア・東欧系の多くの移民がやってきた。夢を持ってやってきた彼らではあったが、騙されたものも多数あり、戻れない食えないという環境の中で、盗みを働くものも多く、現地民の差別心を煽り、トラブルが頻発していた。
 ジョンソン郡の家畜業者協会の評議会で指導者カントンは牛泥棒を働く移民の「粛清」議案を提出。牛泥棒への粛清とは名ばかりで、それは、移民全てを虐殺する、処刑リストでもあった。
 その地に保安官としてやって来たジムは、評議会に出席していた今は酒浸りのビルから粛清計画の話を聞く。
 その処刑リストには、ジムが思いを寄せている娼館の女主人エラ(イザベル・ユペール)の名前もあった。牧場主の雇われガンマン・ネイト(クリストファー・ウォーケン)も彼女を愛しており、エラは、自分の居場所にも、愛の形を貫くことにも固執し、二人の間で揺れ動く。

 そして、移民を粛清するため郡に雇われたハンターたちが、彼らのもとへと向かってくる……。

 史実とは異なる部分も多いとのことではあるが、本作は、合衆国の西部開拓時代の、最大の悲劇として知られる「ジョンソン郡戦争」という呪われた抑圧の歴史的事件を元にしている。
 
 結婚をにおわせるエラへ、なぜジムは歯切れが悪かったのか。ネイトが、ジムへ、俺はおまえが嫌いだ。金持ちのクセに貧乏人のふりをするという言葉の意味は、ラストシーンで、やるせない日常として描かれる。
 
 男女を越えて、一人の人間としての幸福と生き様が、歴史的事件に翻弄される。新世代が変えられたこと、変えられなかったこと。酒びたりになって死んでいくビリーにも、生きながらえたジムにも、青春の残像と共に、今がある。
 その姿が、美しいロケーションの中、多くのエキストラ、迫力の映像、壮大なスケールで描かれる。

 それは、アメリカが、アメリカになるために通った道である。
 異国人である私にとって、アメリカという国の、不可解な部分も、その正義と、理想も、この映画によって体感的に納得できる気がした。

 さて、私が今回見たのは、デジタル修復完全版と呼ばれる216分バージョンである。
 あっという間の三時間半だったわけだが、これが、1980年公開時には、150分に切り刻まれて一般公開されていたというから驚きである。
 以下はパンフレットより当時の経緯、今回の修復過程の抜粋。


  1980年代初頭。『ディア・ハンター』(78年)で米国アカデミー賞の作品賞、監督賞をはじめとする5部門を受賞し、アメリカ映画の今後の担い手と期待されていたマイケル・チミノ監督の『天国の門』は、ハリウッドの老舗スタジオ(チャップリンやD・W・グリフィスなどによって設立されたユナイテッド・アーティスツ)を消滅させる地獄の使者となってしまった。1000万ドルだった予算も撮影期間(最初の12日間で既に予定より10日オーヴァーした)も大幅に超過し、実に製作費4400万ドル(当時のレート換算約80億円)という巨額が投じられた本作は、当初のヴァージョンが大幅に切り刻まれて150分の作品として一般公開されたものの興行は大惨敗。誰にもコントロールできない怪物のような映画として、生みの親のスタジオまでも食いつぶしてしまったのである。

 2005年に、MGMは合衆国とヨーロッパのいくつかの映画館で『天国の門』3時間39分版を公開した。この版はMGMのプリント保管係ジョン・カークが修復作業を担当したもの。1990年代初頭にMGMが保管料を切り詰めるため、200時間以上あった『天国の門』の撮影素材(オリジナル・ネガの大半とさまざまなアウトテイクを含む)を大部分廃棄してしまっていたおかげで、作業は困難をきわめた──見つけることのできた使用可能な素材を、すべて継ぎ合せた──という。チミノはこの修復作業に関与しなかった。完成した修復版プリントはまずパリで、次いでニューヨークの近代美術館で、イザベル・ユペールによる舞台挨拶つきでおこなわれた。ただし、修復版の製作責任者でアートシアター系映画に理解のあった当時のMGM重役ビンガム・レイ(1945年〜2012年)がその後間もなく同社を追われたおかげで、同プロジェクトの予算は削減され、予定されていた拡大公開とDVD発売は実現しなかった。

 このマイケル・チミノの「天国の門」のデジタル修復は、MGMの許可の下、パーク・サーカス社とカラー・ワークス社のサポートを得て、クライテリオン・コレクション社が行ったものである。
 『天国の門』のオリジナル・ネガは、1981年の公開時に149分に短縮カットされてしまったため、この219分のディレクターズカット版修復のベースとして用いることが出来なかった。幸い長尺版は、カラー・ネガを三原色(イエロー、シアン、マゼンタ)に分解し、それぞれを3本に分けたマスター・ネガがYCMに保存されていた。この3本のマスター・ネガをロサンゼルスのカラー・ワークス社が2K解像度でスキャンし、デジタル合成によってオリジナル・カラー・ネガを作成した。クライテリオン・コレクション社は付加的なカラー調整およびゴミや傷を修復する作業を行うと共に、6トラックの磁気ミックスからサウンドトラックを復元した。カラー調整および映像と音声の修復はすべてマイケル・チミノの直接の監督の下に行われた。



 
              
               

           マイケル・チミノ監督 2012 アメリカ (1980 劇場公開)
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