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リーコとオスカーともっと深い影

 特別支援学校に通う、リーコの目線で語られるミステリィ。
 ナイトクラブに勤めるもの凄く美人のママは、リーコのことを「深い才能にめぐまれた」男の子だと言う。
 なんとも素敵な言葉である。
 人より少し時間がかかる、そして、時々ビンゴゲームのように集中力なくごちゃごちゃになる。自分で自分がコントロールできなくなる。だけど、リーコは勉強熱心で、観察力があり、思いつきの素晴らしい「深い才能にめぐまれた」男の子だという価値観は、この本で全く揺らぐことはない。

 そんなリーコの親友は「高い才能にめぐまれた」男の子オスカー。
 そのオスカーが、町中をさわがせている誘拐犯に連れ去られてしまう。
 誘拐犯は「ミスター2000」と呼ばれ、子どもを誘拐しては、2000ユーロを要求している。
 2000ユーロはレートにもよるが、だいたい日本円にして25万円〜30万円。
 誘拐事件にしては、少額のため、大抵の親が要求どおり支払った上で子どもを取り返し、そして警察に届けるのだ。
 
 オスカーを助けるため、学校までのまっすぐな道しか歩いたことのないリーコが、たったひとりで町に飛び出し、犯人の影を追う。
 
 リーコのマンションに住む隣人たちはとても個性的。頭が弱いという言葉で、リーコが傷つけられるのも日常茶飯事だ。しかし、リーコの身体の中に渦巻く、自分を蔑んだ人間への正当な怒りは、生命力にであり、読者にも生き難い主人公の存在を伝える手段ではなく、物語全体のエネルギー、生きている臨場感として描かれている。

 どんなに彼が生き生きと、フラットな視線で他者と向き合い、母の限りない愛で包まれていたとしても、生き難いことは事実であろう。
 しかし、ユーモアは人生の豊かさに直結している。
 この物語の持つユーモアは、リーコの存在を、少し楽観的で豊かなものに感じさせ、そして、自然に備わった叡智は、どんな教養より尊いものだと思わせてくれる。 

 とても気に入ったシーン。
 リーコのママは美人で(それを職業に活かしているが故に)自分の容姿を絶えず気にしている。そこで、リーコが記録した【重力】という言葉。

 【重力】何かが人間よりも重いときは、そのものが人間を引っ張る。たとえば、地球はたいていの人間より重いので、だれも地球からころげおちない。「重力」を発見したのはアイザック・ニュートンという男の人だ。「重力」はおっぱいやりんごにとっては危険なものだ。ということは、ほかの丸いものにとっても危険な可能性がある。
            リーコとオスカーともっと深い影
         書籍データ 岩波書店 アンフドレアス・シュタインヘーフェル 作
              ペータ・シェッソウ さし絵 森川弘子 訳 200904

 

 

| 22:57 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
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