ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
<< November 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
マジックアウト レヴォルーション
 マジックアウト三部作の最終巻である。

 .▲縫△諒法   
http://yukareview.jugem.jp/?eid=19 
 △發Δ劼箸弔隆蕁 
http://yukareview.jugem.jp/?eid=309

  誰もが「才」を持って生まれてくるエテルリア国。人々は、その才を国家の教育によって育てられ、コントロールするすべを学んでゆく。そして、その最高実力者の家計に生まれながら、何の才も持たない「無才人」として生まれてきたアニア。
 エテルリア国に、マジックアウトという、術が一切使えなくなる自然現象が起こる。
 無才人であることから、自分の関心と才能に向き合い、本を読み、年長者たちの言葉に耳を傾けていたアニアは、そんな混乱の国家に一筋の光をもたらす。と、いうのが、第1巻。

 アニアは、隣国オヴェーリアに留学する。今までは、不可視のバリアにより外界から遮断されていたエテルリア国であったが、医術を中心とした技術等を隣国のオヴェーリアから学ぶ必要が出来、国交をはじめたのである。その国で、政治的思惑に巻き込まれるアニア。
 しかし、そこで、アニアは死んだはずの双子の妹に出会う。と、いうのが第2巻。

 そして、本作、第3巻である。

 双子の妹と出会えたことには運命的な意味があった。
 二人が、出会え、意識を集中させたとき、国家は大自然の戒めを受け止め国家が改革をすることを前提に、マジックアウトを終わらせることが可能になるという古文書が存在したのだ。
 マジックアウトの終焉に、手放しで喜ぶであろう利権者たち。
 しかし、一年もの長きに渡り「才」のない国で生き抜いた国民たちが、完全な階級社会のまやかしに戻るはずもないことは容易に想像がつく。そして、この一年に必要に迫られ行われた民主化は、国家的前進には違いなかったが、これまでの恩恵を奪われた人がいることも確かで、その残党が市民戦争を煽っているとの情報もある。これらの、元支配階級の人間たちもマジックアウトの終焉で才を取り戻し、その力を使って反政府運動を展開してくる危険も含んでいたのである。
 
 アニアは、古文書の教えに従い、マジックアウト終焉のの前に、国家の改革を求める。市民戦争真っ只中のエテルリア国にとって、政治的時間がとれらることは、また一人、また一人と尊い兵士たちか傷を負うリスクを選ぶことでもあった。そして、その最高指揮官はアニアの父・パトロス。アニアの思いは父の苦悩と直結している。

 父との葛藤、父を説き伏せること。そして、ある部分で父を越えること。
 偉大なる父との対峙。これは、太古から少年に課せられた宿命であった。
 この宿命を、少女・アニアが、少女らしい強さと愛くるしさを持ちながら、迷いなく真っ直ぐにやり遂げる様に新しさと共感を感じる。

 この物語は、政治的成熟を国家が求められる改革の物語であると共に、少女が、家系として受け取れなかった「無才人」である存在でありながら、父とそっくりの思慮深さと誠実さ、そして頑固さで、父を動かし、精神的に越えていく物語なのだ。

 人の才能とは何か。その人らしさとは何か。そして、それは、社会、国家にどういう影響を与え、与えられるのか。大自然の意思は? その中で生きていく人々の運命、宿命とは?

 複雑な物語世界の中に用意された様々な選択肢は、意外に、単純な真実を炙りだす。

 強く、誠実であろう。その積み重ねが、自分を創り、他者を動かし、社会を、国を変える。

 庶民階級に育てられた双子のアマリリアの言葉遣いは、重厚な物語の中で、読者に近い感覚を呼び起こさせる。そして、一見粗野で、男の子のようなアマリリアの少女性と幼児性。それと、対照的に、聡明な少女であるアニアの、ゆずらぬ強さに見る少年性は、登場人物に含みを持たせ魅力的に描くことに成功していると思う。
 
 才能には、天から与えられたものと、自分で見つけたものがある。
 それは、まわりの人と関わり、時間と空間、環境の中で、積み上げ変化変容していくものだ。

 分かちがたい、才能と関心、自分と社会、そして国家。

 この物語は、自分が社会の一員であり、自分自身であるという当たり前の事実を確かなものとして突きつけてくる。
 


                          マジックアウト〈3〉レヴォルーション
                       書籍データ フレーベル館 佐藤まどか・著 丹地陽子・画 201306
| 23:46 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| | - | - | - |









 
この記事のトラックバックURL

http://yukareview.jugem.jp/trackback/720