ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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おくりびと
 主演の本木雅弘は好きな役者ではない。
 だからというわけではないのだが、話題作を見ないまま本日を迎えてしまっていた。

 納棺師の物語である。
 当時、納棺師という仕事について知っている人は少なかったのではなかろうか。
 知らない仕事を知れるのである。死にまつわる仕事であれば、そこには凝縮されたその人の個別の人生が存在する。感動と、ドラマがあって当たり前ではないか?

 へそ曲がりは損をする。
 早く見たらよかったのに。
 素晴らしい映画だった。

 納棺師。死者と、残されたものの思いを繋ぎ。その場に立会い、悲しいはずの別れを優しい思いで満たしてくれる人。

 山崎努の重厚感とクセのある演技よりも、余貴美子の過去のありそうな存在感よりも、吉行和子、笹野高史の存在感よりも、本木雅弘の清潔感溢れる若々しさが印象に残った。
 当時四十歳を当に越えていた実年齢ことを考えれば、驚異的な穢れなさである。
 このイメージが、普通の生活人でありながら、納棺師としての静謐で、厳粛な、存在を表現していた。

 やっとの思いで、チェロで生計をたてることが出来、東京の管弦楽団で職を得た小林大悟。しかし、突然楽団が解散をすることになり、自分の夢と能力の限界を自問することになる。夢を諦め、妻の美香とともに、故郷の山形県に帰ることを決意。
 故郷での職探し、経験年齢不問の「旅のお手伝い」と書かれた求人広告を旅行代理店だと思った大悟は、面接に向かう。
 そこは、納棺業務を行う会社で、大悟は想像すらできない仕事に臆するが、強引な社長に押しきられる形で就職することになる。

 次第に納棺の仕事に誇りを感じ始める大悟。
 しかし、その気持ちと反比例するように大悟の仕事は周囲の人々の知るところとなり、汚らわしい、普通の仕事ではないと差別と偏見にさらされる。
 その風にさらされる、大悟の若さと、死者へ向かう真摯さは、夢を諦めたときにプロ使用の名器は売り払ったため、子どもの頃使っていた、大悟には小さすぎるチェロを演奏するシーンに象徴され、精神的に、形式的に、人が死ぬことに立ち会うことの意味深さを歌い上げている。

 自分を捨てた父の遺体を目にした大悟。
 その人の生きた証は、やはり、見送られ方で完結するのだと感じさせてくれる。
 この父がいたから、命は脈々と流れていく。
 しかし、人は、一人で決断しなければならないこと、一人で迎えなければならない時がある。

 なんとも幸福な気持ちにさせてくれる映画だった。

            
                 滝田洋二郎 監督 2008 日本映画           
| 14:20 | DVDなど | comments(0) | trackbacks(0) |
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