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いのちがいちばん輝く日〜あるホスピス病棟の40日〜

 地元、滋賀県の近江八幡市にあるヴォーリズ記念病院でのドキュメンタリー映画ということで、お付き合いのチケットを買った。
 まず、なぜそんなことを言うかと問われれば、予想を超えて良かったからである。
 ホスピスでの話である、当然死に行く人と向き合うことになる。ヴォーリスである。キリスト教の思想に裏打ちされた愛がそこにあるに違いない。当然、違いないという言葉を重ねながら、へそ曲がりの私は、突きつけられる問題と、心が揺れ動くであろう枠を自分でつくっていたのだと思う。
 この映画は、それを超える個別の真実の重みと、宗教という背景を超えた愛に溢れていた。

 六回目の冬を迎えようとしているホスピス「希望館」。
 最末期を迎えたがん患者のための医療施設である。
 死に向かう人とは思えないほど、穏やかな顔をした患者と、その家族。
 医師も看護師も、患者一人ひとりの聞き取りにくくさえある言葉に耳を傾け、その言葉をくり返し確認し、思いを共有しようとする。
 その、丁寧に時間をかけ、その人の最後の時間に向き合っていく姿勢に圧倒された。
 ホスピス医の細井順さんは白衣を着ない。それはがんを患った自身の経験から、「患者も医者も同じ弱さを持った人間同士」であるという考えに至った結果なのだそうだ。細井さんは目線を合わせて患者の「痛み」や「寂しさ」に寄り添う。

 何人かの患者の人生がドキュメントとして追われていくわけだが、私は、一番、高校の音楽教師・池本成博さんの人生が印象に残った。
 首の付け根にがんの腫瘍が見つかり、余命1
年と宣告され、希望館に入院。生まれたばかりの二男の孫に一目会うため、東京までの旅行を計画する物語がメインである。
 通院だった頃の池本さんの、教師然とした姿に、どんどん死の影が、比喩ではなく近づいているのがわかる。ローレン・バコールの自伝『私一人』の中に、病の床にあった、夫、ハンフリー・ボガードに添い寝をした時、死臭がしたことを書いていて印象に残っている。死の匂いがしてくるような池本さんの姿を、過剰に演出することなく淡々と描くその映像に、バコールの言葉を重ね、怖いような震えを覚えた。
 一人の職業人として、医師や看護師、彼らの日常に寄り添ってみる。
 今日が最後かもしれない人と、自分の日常が交差するのである。
 いったい、人間は、どこまで誠実に、自分にとっては、何でもない今日を生きられるのだろうか。

 映画の後は、企画・演出を手がけた溝渕雅幸さんと、『ガンが病気じゃなくなったとき』を執筆し、夫を在宅で看取った岩崎順子さんの対談が行われた。


      

溝渕さん☆
 32万人のがん患者が年間に死亡している日本において、ホスピスで最後を迎える人は7%、そして、在宅で亡くなる人も7%弱。ほとんどの人が、一般の病院でなくなっているということになる。ホスピスでも長期入院が難しい現在、1977年以前のように、在宅で看取ることも多くなっていくのではないか。
 死に場所のない時代がやってくるかもしれない。
 命というものは、人間が動物である以上、死をもって終焉する。
 しかし、生きてきた証は、血縁関係なく思いも含め受け継がれていくのではないか? 良い別れをしてこそ、その人の力で、また誰かが生かされていく。
 生きる力は、どのように伝わっていくのか、その命のリレーを知りたくてこの映画を撮った。
 余命宣言から、一年なりなんなりの時間があるガン患者は、幸せであるといえるのかもしれない。なぜなら、犯罪被害者や、災害にあい、ある日突然命を絶たれた人は、死に備える準備期間がないから。
 死を意識したところから、本当の人生は始まるのだ。

岩崎さん☆
 夫の死に立ち会って、生きようと思っても元気になれないのと同じように、もうここまでで良いと自分が思ったところで、心臓は止められないという事実を突きつけられた。
 死体になった夫に、子どもたちは触って気づいたこと。顔は冷たくても、お腹はそれでも温かかった。
 人の死に立ち会うと、残されたものは、必ず後悔する。あんなことしなければよかった。もっとこうしてあげたらよかった。後悔は、大事な人に会えた誇りではないかと思う。

      
           柏木哲夫/細井順 監督
 有限会社オフィスアクシス/アールズスタッフ 制作  2012

| 22:57 | 映画 | comments(2) | trackbacks(1) |
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映画について触れて頂きありがとうございます!沢山の方にご覧いただけるようこれからも頑張ります。
| 藤原福次 | 2013/06/23 21:19 |
藤原福次様

こうしている一秒も死に向かっている一人の人間として、
この映画で、死と向かい合っている人々と同じ世代の親を持つものとして、
一人の職業人として、
いろいろ考え、突きつけられ、そして幸せとは何かを考えた映画でした。
私は、ご縁あって拝見できましたが、多くの人が見るチャンスに恵まれたら良いなぁと思います。
大変な使命を抱えたお仕事だと思いますが、応援しております! がんばってください。
| ゆかちゃん☆ | 2013/06/27 23:48 |









 
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| 知識陣 健康 | 2013/06/14 05:51 |
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