ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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第三の目を持とう!

某中学校で二年生全クラスで授業をさせていただきました。
  自分自身、たいへん楽しい経験でしたので、忘備録的に記録しておきたいと思います。

今日は、第三の目を持とうという題で話をします。

第三の目って、何やねんと思われるかもしれません。

皆さんは、中学二年生という「今」を生きておられます。

中学二年生っていうと、まぁ、今、世の中にころがっていることの、嘘、とか、欺瞞に気づく年です。世の中とか、誰かが言っていることについてちゃんと批判できる年齢です。

「うそつけ」とか「キレイ事やろっ」ってヤツですね。

でも、もう一歩、すすんで、何で、自分は、そう思ったかを深めてもらいたい。

正しいかとか、正しくないかとかいうことではない。

自分というフィルターの存在を意識してもらいたい。

私は、読書というものは、そういうものだと思っています。

正解なんかない。ただ、自分が面白いか、面白くないか。そして、なぜ、そう思ったか。極論すれば、「なぜ」っていうのも分析しないでいい。そう、感じた、「今」の自分を大切にしてほしい。それは、もしかしたら、「今」しか感じられないことかもしれない。その、危うい出会いが、今、読書をする意味です。

 

とはいえ、具体的にどうなんや? と、わかりやすいので、絵本を実例に、例えば、動物の命のことを考えてみることにしましょう。

◎  『Brother EagleSister Sky 酋長シアトルからのメッセージ』
            スーザン・ジェファーズ絵 JULA出版社
 白人に血みどろの戦いを仕掛けられ、土地を奪われる契約書にサインをさせたれるテーブルにつかされたインディアンの偉大なる酋長シアトルの演説の絵本化。
 空が金で買えるだろう? と、酋長シアトルは話し始めた。
 という言葉で始まるメッセージ性の高い演説。

 

    『黄色いボール』 立松和平・文 長新太・絵 河出書房新社

  これは物語なので、ただ聞いてもらえれば。
 東京に転勤になり、動物が変えないマンションに引っ越すため、タロウは、投げられたボールを拾いに走っている間に飼い主に捨てられる。長い放浪の末、新しい飼い主を得るまでの話。
 
小屋のなかには 黄色いボールが いれてある。
 ケンちゃんか パパに あえたら、ほくは ボールを
 もどさなければ ならない。ずいぶん よごれて
 しまったが、このボールは パパの ものだ。
  みんなは ぼくを ポチと よぶ。
 ポチと よばれて、
 ぼくも ワンと へんじを するようになった。

     『動物の死は、かなしい?』 あべ弘士 河出書房新社

 旭山動物園で、長年飼育係をされていた、絵本作家あべ弘士さんの、なぜ飼育係になったか、そこでどんな体験をした書いた本。 
 
野生動物は弱っていることろを見られると、狙われてすぐに食べられたり、攻撃されたりする。弱みは死を意味する。動物園の動物も同じで、なかなか弱みを見せない。気づいたときには手遅れの場合がほとんどだ。

 
どの本に魅かれでしょうか?
 
同じ、動物の命は大切だといっても、演説で直接的な言葉で語る本、物語、体験談と、いろいろなアプローチの本があるという例です。
 
ではここで、もう一冊読んでみます。有名な絵本なので、知っている人もいるかもしれません。

 

     100万回生きたねこ』 佐野洋子 講談社


 この流れで読まれると、動物の命の話だと、脅迫観念が生まれるのでは?
 それに騙されてはいけない。
 実際、この本を、「動物愛護」の観点から読む人もいる。間違っては、いないと思う。本は、どう読もうが自由だから。だけど、私は、その読み方が大嫌いです。もっと言えば、この本は、こう読めみたいな解説書も大嫌い。ほっといてくれと言いたくなる。
 私は、この本は、いくら、いろいろな人に好きでいてもらったとしても、自分が自分のことを本当に好きになって、誰かを愛して、その誰かのことを失った時本気の涙を流せるくらいにならないと、人って、本当に死ぬことすらできない生き物なんだって、ちょっと哲学的に読みたいと思うわけです。
 どんなに有名な人や、偉い人が、こう読むといっても、違うんじゃない? って思ったり、ムカッとしたり、逆に、その読み方面白いなって思う気持ち。それが、今の自分のそのもの。それが、第三の目なわけです。

 では、その第三の目をどうやって育てようか? と、言うのがこれからの話です。

 

 

 私自身、中学生のときに運命の物語と出会いました。

 ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』です。今も、中学一年の教科書に載っているらしいですね。覚えていますか?

◎  『ヘッセ全集 2 車輪の下』新潮社 より 「少年の日の思い出」
 「非の打ち所がない」ことが欠点だという優等生の少年が珍しい蝶を標本にしたと聞いて彼の部屋に見にいったら、人がいなくて、蝶が置きっ放しになっている。ぼくは、その蝶を持って飛び出す。ところが、途中、人に会ってびっくりして蝶をポケットにねじ込んで、羽を壊してしまう。夜、罪の意識に母親に告白したら、ちゃんと謝りに行けといわれる話です。
 この物語を読んで、私はある一文に痺れた。ぼくが、優等生に謝りに行ったところでのシーンです。
 
すると、エーミールは激したり、ぼくをどなりつけたりしないで、低く、ちぇっと舌を鳴らし、しばらくじっとぼくを見つめていたが、それから『そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな』と言った。 
 私は、この『そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな』に痺れた。なんで? って思うでしょう。 

 なんでもない言葉だけど、二人の関係、その少年の性格を、その何でもない言葉にビタっと当てはめていて、凄いなって思った。ここに物語がある、これが、物語なんだと感動したわけです。こんな物語が書けたら、私は死んでも良いと思った。

  その感動を追い求めて今がある。

  では、私は、どんな仕事をしているか?
  こういう本を読んでいます。

     『魔女じゃないもん!  リセ&バンビ、危機一髪!!』
           宮下恵茉 集英社みらい文庫

 参考    http://yukareview.jugem.jp/?eid=489
 どうか、バンビの願いがかないますように
 という言葉は、友情を描く上で正しいと私は思う。みんな、日常生活では意識せずに選んでいる言葉。そんな、だれも意識していないことを、なんでもない言葉で、きっちり描ける作家は凄いと思う。そんな一文に会えた時、あぁ、これが物語だって、私は痺れる。
 
 皆さんは、もう、自分のお小遣いで、好きな本を買ったり、図書館で好きな本を借りることができる。でも、もう少し小さい人たちには、どうしても、この本を読みなさいとか、面白いって言ってくれる大人の存在が必要。
 児童書っていうのはリスキーなジャンルで、こういう、大人から「漫画みたいな本読んで」って眉をしかめられるような装丁の本に、もの凄く文学の喜びが溢れている本がいっぱいある。そして、逆に、先生の前でなんだけど、先生がすすめてくれそうな立派な装丁で、内容の無いスッカスカの本もある。
 だから、私は、とにかく、児童書っていわれるジャンルの本をたくさん読んで、本当に面白い本のことを、これが面白いってじゃべることを仕事にしている。

 
 他にも、一文に痺れたのは、この本。

     『マジックアウト 1 アニアの方法』
     佐藤まどか 著 丹地陽子 画 フレーベル館

  そしてこのプロジェクトは「アニアの方法」とよばれた。
 参考 
 http://yukareview.jugem.jp/?eid=19

 この本は、内容も素敵なんですけど、本の装丁も素敵でしょう? 
 この本を書いた、佐藤まどかさんは、イタリアで時計や、椅子のデザイナーをしている人。だから、表紙のデザインなんかは、かなりこだわる。

 本作りというのは、いろいろなところに、作り手の人生が浮かび上がってくるから面白い。


 じゃぁ、私は? と、聞かれたら、残念ながら、一文に痺れているだけで、食べていけるほど、世の中は甘くない。だから、私は、常日頃は、普通に企業に勤めている。そんな自分が、どんなものを面白いかと思うかと聞かれたら、企業人として、職業意識や組織が描かれた本に興味がある。
 

     『マスカレード・ホテル』 東野圭吾 集英社

 あるホテルで事件が起こると予告がはいる。その情報を得た警察がホテルマンに身をやつして、潜入捜査をする。
 警察は、人を疑い、人を裁きの場に引きずり出すのが仕事。ホテルの人は、お客さんの無理難題をすべて受け入れて、すべてお客様が正しいという観点から、ホテルにいる間、心地よく過ごしてもらうという仕事。
 全く違う価値観と常識で仕事をしている人たちが、お客様の安全を守る、犯人をつかまえるという一点を共通の目的に協力しなければならない状況になる。その時の、お互いのプロ意識のぶつかり合いが面白い。

 この本は、どちらが良いとも言っていないところが良い。
 お互いの仕事に対するプライドで、事件を明るみに出していくし、そこにはお互いへの尊敬がある。

     『出口のない海』 横山秀夫 講談社

 横山秀夫も刑事モノを書く作家。横山秀夫の作品には、所謂《はみ出し者》の視点は存在しない。組織に所属し、基本的にその組織に順応している人間像が描かれる。組織にはまっている人間が、その限られた、役職権限と、組織人として求められる制限の中で、身の幅三センチの自由さを最大限に生かし、いかに人間として、個人として、誠実に、理屈を通した生き方ができるか? どれだけ、自分らしくカッコよくいられるか? この緊張感が横山作品の魅力だと思う。

  この物語は、そんな刑事モノとはちょっと違った作品で、甲子園の優勝投手が、戦争が激化するなかで「回天」という、海の特攻機(命を落とすことを前提に、片道燃料で、敵機につっ込む)に乗り込む作品。
 私は、組織というものが一番悪い形で機能したのが戦争だと思っている。上に逆らえないとか、監視するとか。では、その悪の組織に、野球という生の組織を重ねた時、こんな時代でも、こんな生き方を余儀なくされても、人は、与えられた三センチの自由の中で、自分らしく生きられるのか?
 そんなことを問うてくる本です。ぜひ、読んでください。

  では、生活を離れたところで、どう読書を広げていくか?

 これは、自分が、好きな人、面白いと思った人の、面白がることを追いかけるのが一番ではないでしょうか?

 私が、今、一番興味を持っているのは、平野啓一郎という作家です。
 なぜ、興味を持ったかと言うと、講演会に行って、
僕は文学は、やはりマイノリティの声だと思っています。
という、言葉に痺れたから。 

     『世界は文学でできている』 沼野充義・編著 光文社

  その講演会の模様は、この本に収録されています。

 参考 → http://yukareview.jugem.jp/?eid=158

 で、その、平野啓一郎さんの興味を私も追いかけています。

果てしなく美しい日本 ドナルド・キーン×平野啓一郎スペシャル対談
     http://yukareview.jugem.jp/?eid=442

細江英公 × 平野啓一郎 トークイベント
     http://yukareview.jugem.jp/?eid=315  

 細江英公さんが撮影された、写真の中に、阪東玉三郎さんが化粧台に向かっておられる写真がある。同じ時期に、発売された写真集に、こんなものもあります。

◎  『細江英公人間写真集 創世記 若き日の芸術家たち』国書刊行会
     『亀治郎の肖像』  齋藤芳弘・写真 文化出版局

 同じように、化粧台に向かう歌舞伎役者。写真でもいろいろあると思うでしょう? たぶん、図書館での分類は、同じ有名人を撮影しても、細江英公さんのは、「写真」のところで、亀治郎さんのは「芸能」のことろに置かれていると思う。そんなことは、ある意味、自分の感性とは関係ない。
 そちらが好きか、どちらが好みか、それで良い。
 好きだって気持ちは、今の等身大の自分からしか生まれない。


 最後は、やっぱり生活の中から物語は生まれるという話をしますね。

     『神様 2011』 川上弘美 講談社

  参考  http://yukareview.jugem.jp/?eid=491
 東日本大震災の後、作家が自分のデビュー作を書き直す作業をしている。変わらない文体と物語世界を持ちながら、決定的に何かが変わっている。二つの物語を並べる意味を感じさせる

 

     『林業少年』 堀米薫・作 スカイエマ・絵 新日本出版社

  生活から文学が生まれることの見本のような作品。

 生活者であることが物語を深めている。

 宮城県で、農家、酪農、林業をしている作者。

 小学校五年生の少年が、はじめて、百年杉の伐採と荷出し、それに関わる人々のありようを知る物語だが、大学進学で、自分の人生を考え出した姉の楓が、楓とは、木に風 だということを実感する物語でもある。


 ちょっと戻って、先ほどの市川亀治郎さんが、写真集の中で書いている言葉を最後に紹介したいと思います。

 
役者たるもの、
 一人でも多くの人々に
 感動を与え続けることが、
 その使命だと
 私は考えています。
 観客の心を打つには、
 やはり誰よりも
 自分自身がときめいて
 いなければならない
 のではないでしょうか。
 自分の心が輝いていれば、
 自然とそれが観る者の
 心に伝わってゆく。
 そう、どこまでも自然に。
 それこそ最高の
 境地ではないかと考えます。
 
 表現者の思いがある。読者の思いと重なった時、何かを受け取ることができる。表現する方も、受け取る方も面白がっていないと、何も始まらないし、何も生まれない。
 生活から、物語は生まれる。そして、それを読む人が、判断するのも、その読者の生活があってこそ。その本と、今出会う意味がある。

 よく、大人は、本を読むと豊かな心が育つといいます。それは、半分本当で、本文嘘だって私は思う、けっして、本の中に豊かな心になれるネタが詰まっているわけではない。

 今、こうやって、生きている皆さん。

 面白くないとか、面白いとか、そう強く感じて、何でそんなことを思ったのか考えて、今、そう考えている自分を、漠然とでいい「大切」だと感じることが、人生を豊かにしてくれるということです。

 みなさん、勉強とか、部活とか、友だちとか、好きな人とか、毎日、忙しいでしょ。

 だから、その毎日を大切にしてください。

 そのことが、皆さんを良い読者し、もしかしたら、良い書き手にしてくれます。生活という基盤がなくては、何も面白くないし、何も生み出すことはできない。

 そして、時々、本も読んで・・・絵本でもいいんです。絵本は、子どもの読み物とかいう人もいるけど、小さな物語にも、始まりがあって終わりがある。けっして、小学生のときは感じられなかったことを感じることができるはずです。

 それは、みなさなんの、たぶん、みなさんにとっては、なんでもない毎日を積み重ねているからです。

 しっかり、生きて、たまには、本を読んでください。 

 そして、どう感じたかを大切に、してください。その、「どう」が、第三の目です。

 そこに自分の「今」があるはずです!
 これで私の授業を終わります。

 

| 22:34 | 講演会 | comments(4) | trackbacks(0) |
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おおお、ここで夕香さんの授業を受けられた!!
今の中学生はこんな授業を受けられていいなあ。
私もこんな授業を受けていれば、回り道せずにすんだかもしれないのに(-_-;)

でもまあ、その回り道が糧になってるんですけどね!!

拙著までご紹介くださってありがとうございました。\(^o^)/
| 宮下恵茉 | 2013/03/13 11:42 |
宮下恵茉様

7クラスで同じことを話した・・・つもりですが、生徒の皆さんの反応で「興に乗る」部分が違うので、きっと、濃淡あったと思います。
どの部分が、みんなに響いたのかなぁ。
少しでも、心に火をつけられたり、何か化学反応の一物質になれたりしたら嬉しい。
出会えたってだけで、きっと何か小さなミラクルが起きてるんじゃないかと思える時間でした。
14歳っていうパワーを、いっぱいもらえた気がします!!!
| ゆかちゃん☆ | 2013/03/13 23:16 |
いいなー私も授業受けたいです…。
でも私まだ小学生(今年中学に進級します&#9996;)
なので無理ですよね。
もし来ていただけるなら、静岡県の中郡にある所に来てください。
お願い致します。
| 翔 | 2013/03/16 22:25 |
翔様

いつも見てくださってありがとうございます。
舞台役者のように、ライブな喜びを感じさせてもらえる体験でした。私も、呼んで頂けたら、何処にでも馳せ参じるのですが・・・静岡ですか! 行きたいです。
でも、こうやって、距離があっても、いろいろ報告させていただけて、お話できたりするのはインターネットのおかげですね。また、ご来店くださいね!
| ゆかちゃん☆ | 2013/03/17 04:16 |









 
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