ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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レ・ミゼラブル
 今年最初の映画に選んだのは、『LES MISERABLES』
 文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を基にした大ヒットミュージカルの映画化である。

 『レ・ミゼラブル』が書かれたのは1862年。日本でも、黒岩涙香が訳した『ああ無情』という題名で知られており、とりわけ、銀の燭台のエピソードは、児童向けの書籍としても有名である。小説に興味がない人でも、このエピソードを短編として読んだ人は多いのではないだろうか。そういう意味では、『レ・ミゼラブル』という原題を、知らぬ人がないほど周知させたのは、ミュージカルの方だと思う。1980年以来、世界各国でロングラン上演されてきた。

 1815年、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、飢えた妹の子どものために、パンを一つ盗んだ罪で投獄される。脱獄を繰り返したため、19年も刑務所で過酷な労働を強いられた後、仮釈放されることになった。
 自由の身とは名ばかりで、定期的に義務付けられた面接と、差別的な身分証明書に、現実の厳しさと人間の冷たさを突きつけられる毎日。憎しみに瞳をギラつかせていたジャン・バルジャンは、ある教会に倒れこむ。老司教の銀食器を盗み出すが、この食器は、この人にあげたのだという司教の慈悲に触れ人間の心を取り戻す。
 そして、8年の歳月が流れ、工場主として成功を収め市長になった彼は、以前自分の工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束する。
 彼を追うジャベール警部には、ラッセル・クロウ。
 また、俗悪な女を演じさせたら右に出るものはいない、ヘレナ・ボナム=カーターが、コゼットの育ての親であり、時代の逞しき民衆のいやらしさを象徴するようなマダム・テナルディエを見事に演じている。

 158分もある映画を飽きさせず一気にみせる手腕も素晴らしく、ミュージカルでもおなじみの感動的なナンバーには胸が熱くなる。
 映画のテーマは、神と世俗であると思うが、歌は、人が神に近づける瞬間を一番表現できる方法なのだろう。もし、芝居だけで、この生のセリフと人の精神性を語るとするならば、よっぽど上手くやったところで、きれいごとになってしまう可能性は否めない。これは、ミュージカルでしか成しえない、理想と懺悔と真実の物語なのだと思う。
 神を正義とし生きたジャン・バルジャンは幸せに神に召され、世俗の「法」に神の正しさを求めたベジャールはその矛盾に苦しみ自死を選ぶ。この決着と、正義の求め方も、やはりミュージカルでなければ、リアリティ溢れる場面展開の中で、あまりに抽象的で、意図不明に陥るか、しらけてしまうシーンになるかもしれないと思う。
 すべてが、あるべきところに最良の形で収まった、良質の映画といえるだろう。

 しかしながら、前評判に期待しすぎたからか、号泣とはいかなかったし、今年はこれ以上の映画はないだろうというほど感動しなかったのも確かである。

 私が、この映画で一番印象に残ったのは、コゼットの運命の人となる、革命家のマリウスに恋をする貧民街の少女エポニーヌのセリフである。
 彼女は、先に紹介した、コゼットの育ての親マダム・テラルディエの娘である。マリウスとの身分の違いにも、彼の心にはコゼットしか住んでいないことも、そして、革命の意味も、その中でマリウスのために自分の命を投げ出せる勇気も、聡明さも持っている少女である。
 彼女が、マリウスに魅かれている自分の気持ちをこんな言葉で表現する。
「私、あなたの話し方が好きよ。」
 彼女の精神の美しさと、叶わぬ恋のどうにもできない切なさは、この言葉に凝縮されたのではないか。関係と人格とドラマ。そこにぴたっとはまる言葉は、なんの変哲もない言葉でも特別なものになる。その言葉に出会えただけで、あぁいい映画を観た。そんな気分になれるものだと思う。



                  
                        トム・フーパー監督 2012 イギリス映画
| 23:59 | 映画 | comments(2) | trackbacks(0) |
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私もエポニーヌに一番心惹かれました。
育つ環境の呪縛から逃れられない中で無垢な魂を保ち続けるところが哀れに思えます。
バルジャンが出獄した後さまよう町が、サン‐ミッシェル・デギュイユ礼拝堂に見えたのですが違いますか?
博学のyukaさんならご存知かと…
| 草の香り | 2013/01/03 12:50 |
草の香り様

ここは、サン・ミッシェルだってセリフがあったように記憶していますが・・・フランスは訪れたことがなく、ライブにそうそうとは思えない風景でした。すみません<m(__)m>
そうなんですよね! 環境とそぐわない精神を持つ少女が、日向の匂いのする男に憧れるストーリーは永遠な気がします! 理解する聡明さがあるゆえの哀れさですよね。
フラれる女のセリフには、とても興味があります。
どう愛したか、どう生きたかが明確にでるように思うから。
| ゆかちゃん☆ | 2013/01/03 22:19 |









 
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