ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
<< November 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
ヴァンパイアの恋人 誓いのキスは誰のもの?

 現代的感覚と豊かな叙情性を併せ持つセルゲイ・プロコフィエフの楽曲が似合いそうな作品だ。

 血の匂い、孤独な静けさ、華奢で繊細な輪郭、フォーマルな装いと、恋の予感。
 女の子なら誰だって憧れてやまない世界ではないだろうか。
 退廃の匂い、強引な感情、戸惑いの憧れ。
 文学少女の心も鷲掴みの物語展開。
 マンガ的といわれるかもしないけど、文字だから得られる妄想全開の世界観である。
 
 たった一人の身内である母親を失った少女・ルナのもとに、突然、死に別れたはずの父親の使いと名乗る老紳士・ランスロットがあらわれる。欲深いおばさんにもらわれていくことを避けるあまり、ルナは、言われるがまま、ブルッド・ブラザー島にあるハーフムーン学園の寄宿舎に入ることを選ぶ。
 しかし、そのブルッド・ブラザー島は、ヴァンパイアと人間の共存する街だった。
 男装の麗人 フィオナ
 冷たい瞳を持つ エルゼァール
 ヴァンパイアの島の時期黒太子 ケネス
 我がままに生き、ルナを我が物にしようとする ギディオン
 ギディオンの守人で、ギディオンに愛されることに固執する、痩身の少年・アダム 
 
 ヴァンパイアのお抱え、血液提供者・守人とヴァンパイアのセクシャルな関係も魅力的。  

 登場人物と相関図を紹介するだけでも、読んでみたいと感じるのではないだろうか。
 しかし、この物語の一番の魅力は、シーンである。

 場面として一番好きだったのは、ルナがギディオンの主催するパーティーに迷い込んだところ。

 そのとき、ルナは全身がぞわっとした。
 思わず会場を見回すと、会場の全員がこちらを見ていた。
 それは、一瞬、時間がとまったように、踊っていた者はダンスの姿勢のまま、グラスをかたむけていた者はクラスをかかげたまま、ルナをふり向いていたのだ。

 そして人間関係を描いた部分では、

 はじめて聞くエルゼァールの長台詞は、やや低めの響き。
「は・・・」
 ルナはつい、聞きほれてしまった。
 それに、いかにも冷たそうに見えるエルゼァールが、お説教するほど、ルナを気にかけてくれていたことにも、すこしおどろいていた。
「おい、聞いているのか」
と、エルゼァールの声が怒った。

 私は、ヒロインに厳しい。傷ついたふりをしながら、しっかりヒーローの気持ちをキープしていくヒロインには徹底的にダメだしをしながら読む。
 しかし、ルナの可憐さには不思議な魅力を感じながら読んだ。エルゼァールを「すてき」と言い漏らした後で、ケネスを「鉄壁」と表現し、ケネスに失笑される部分も、幼さと恥じらいがあって好感が持てる。

 久々にロマンチックな気分を堪能させてくれる物語に出会えたなぁと思う。



            ヴァンパイアの恋人 誓いのキスは誰のもの? (ポプラカラフル文庫)
            書籍データ ポプラ カラフル文庫 越水利江子 201206

| 23:53 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| | - | - | - |









 
この記事のトラックバックURL

http://yukareview.jugem.jp/trackback/319