ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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マジックアウト アニアの方法
 表紙に力のある本に出会えると嬉しくなる。
 表紙を見たとたん、大げさだと笑われるかもいれないが、一目ぼれのようなトキメキを覚える。運命の出会いのようなトキメキの中で本を読み始められるのは、なにものにも変えがたい幸せだと思う。
 真っ直ぐな少女の目が、こちらを見ている。
 抱えるような大きな本と、彼女に吹く風。何よりも印象的な瞳。
 私は、新人の役者に、あぁこの子はいけるかも! と、思うのと同質の期待を持って読み始めた。

 才術の国・エテルリア。
 誰もが一つの「才」を持って生まれてくる。国民は皆、「才」を教育機関で磨き、そしてそれをコントロールし生かす「術」を習得していくことがレール付けられている。決められたレールと、規律だったピラミッッド型の組織の中で彼らは生きている。
 まれに「才」を持たぬ子が突然変異で生まれてくる。
 アニアは、名家の血筋、偉大なる父を持ちながら、無才人として生まれてきた。
「この世に生まれてくるには、必ず意味がある。無才人とて同じこと。おのおのに、おのおのの存在意義があるのじゃ。それをわすれてはならぬ。」と、賢者は言う。
 アニアは、迷いを抱えながらも、本を読むことで乾くような知識欲を満たし、育ちの良い級友たちの平等な友情の中で、多少の差別にさらされながらも、守られて育ってきた。

 しかし、才の力が全く発揮できなくなる「マジックアウト」が、突然エテルリア国を襲った。
 「人間に非力さ」をわからせるために「大自然」があたえた試練だとされる「マジックアウト」。便利な生活も医療も食料も、すべて才術に頼っていた人々の混乱は激しいものだった。治安が悪化するなか、人々は滅亡という言葉を口にし始める。
 
 才術に頼らず知識を身につけ、才を持たぬ他国の事情にも詳しいと、俄かに注目されるアニア。人々の厳しく、差別的な視線にさらされながらも、アニアは、故郷のため、愛する人たちのために、まずは電力の確保を目指し行動し始める。

 「アニアの苦しみは無才人としてのそれではなく、無才人の娘を愛さない父親を持つことではなかったのか。そんなことはとうの昔にわかっていたはずなのに、なお娘を愛そうとしなかった自分はいったい何者なのか。」
 父は、マジックアウトの中で自分の欺瞞に気付く。
 罪と罰、責められたわけではなく、父は、自分の良心によって、自分の罪と向き合うのだ。
 このことは、生まれが卑しいことにコンプレックスをもちながらも、美しくあろうとあがく、ヴェネリアの存在と対比していくことになる。表面的な美という、誰かに認められないと価値をもたないヴェネリアは、やがて下されるであろう罰の危うさを含みながら存在している。
 すっきりと図式対比されながらも、物語は、自分で選んだわけでもない「才」に翻弄され、それでも、個別のもので変容していく人間らしさの陰と陽という、かなりデリケートな部分を真っ直ぐに語っていく。

 そしてこのプロジェクトは「アニアの方法」とよばれた。
 
 この一文にぐっと痺れた。
 ただの「見出し」くらいにしか考えていなかった副題が、「そして」と、ついでのように語られる一文が、この巻の核を担っているのこと気付く。
 「アニアの方法」というよび方にこそ、その人への尊敬と、それとはまた違う自分の価値観と、そのことへの協力、組織や共生の基本があるのではないか。
 その人の歴史や、その人に与えた影響のすべてを肯定するような、呼び方だ。その、よび方が、政治の中で、不特定多数の国民たちの間でなされたことは、エテルリア国再生の一歩なのではないか。 

 人にはそれぞれ方法がある。その方法を尊敬しあってこそ、人は豊かに生きられるのだと思う。天からもらった才能の真意を本物にするためには、人それぞれの歴史があってこそであり、人生の中での変容の賜物なだのろう。
 前時代的でも、回りくどくても、人はそれぞれ自分の方法で、自分が生まれた意味と向き合うしかない。
 才術の国の人々が、自分の「才」と本当に向き合う時間は、今、始まったのだ。
 
 3部作になる予定と記載されている・・・・あぁ、早く続きが読みたい。
 



                                        
                                           
                 書籍データ フレーベル館 佐藤まどか・著 丹地陽子・画 201110
| 22:29 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
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