ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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永遠に捨てない服が着たい
 副題に、「太陽の写真家と子どもたちのエコ革命」とある。
 とても魅力的な副題だ。
 読み終わった感想を、もう少し長く言うとするなら、手のひらにしっくりくる環境問題を、きっちりと追いかけた、一人の青年と、魅力的な大人たちに敏感に反応し、自分たちに引き寄せ、行動を起こした子どもたちの物語だ。
 舞台が、京都だからだろうか、「しっくりなじむ」という言葉が、褒め言葉であり、生き方であり、美学であるように思う。
 
 主人公の一人は、ゴミでつくったピンホールカメラで、太陽と撮る写真家・岡部達平さん。
 こだわりゆえに広告写真家にはなれなかった彼は、環境問題に興味を持ち、自分のカメラが、地球エネルギーの源・太陽をとらえたことにある運命的なものを感じる。そして、地域の人に協力を求める先生たちの思いに応え、環境学習の先生として小学校に赴くことになるのだ。

 環境問題にヒーローを求めると、政治的な話になってしまう。もちろん、政治、企業、それらのこと無しに、地球の環境は語ることはできないと思うが、この本に書かれていることは、もっと市井の、誰でも思いつくかもしれないが、自分の生き方に投影させることが難しいこと。自分のすぐ先の未来に直結した取り組みである。
 ペットボトルが環境に良いといいながら、ペットボトルを量産しすぎた社会矛盾へに気付くくだりは、システム化していく中で見失われていく志を描き出し、市井の人々の連帯と行動がなければ、環境問題は結果を得られないことを見事に浮き彫りにしている。
 「地球税」と呼び、自然環境を守る人たちの活動資金を積極的に支出するパタゴニアの人々、環境学習をしたからこそ生まれた願いと、願いを持ち続けられない不安を感じる子どもたち。
 岡部さんと、子どもたちの一番身近にあるリサイクルとして、卒業の時に体操服を集め、その体操服を新しい繊維に生まれ変わらせて、よみがえる体操服として、学校にかえってこさせることを考えつく。
 校長先生の、反応は良かったものの、地域の人々への説明などが必要なようで、岡部さんにとって、進捗の見えない、手ごたえのない日々が過ぎていく。
 何かを動かす時、ひらめきと、仲間が必要。なにより、仲間と共に歩むことが、子どもであることをはじめとした、自分ではコントロールできない限界を、みんなで超えていくことを可能にする。
 そして、「待つ」ことも一つの取り組みとして、この物語は描いている。
 今すぐ、できることをしなければならない、環境破壊は進行形だ。
 しかし、すぐに結果が出ないもどかしさの克服もまた、環境への取り組みの一面であるのではないか? 最善を尽くして待つ。その尊さを感じるノンフィクションである。

                                
                                    永遠に捨てない服が着たい 太陽の写真家と子どもたちのエコ革命                      
               書籍データ 汐文社 今関信子 201202
| 22:06 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
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