ぜひぜひ読んでほしい本のショートreviewをUPします!
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好奇心のナゾを追え!! 田中久重の巻

 「アドベンチャー偉人伝」と副題がついている。現代の子どもたちが、ミッションを受けてタイムスリップ。イノベーターの邪魔をする謎の組織などがでてきて、子どもに手に取りやすいようになっているようだが、どうも、ガチャガチャとしていて読みにくく仕上がっているのは残念だ。

 しかし、からくり儀右衛門と呼ばれた、東芝の創業者・田中久重の一生は面白く読んだ。

 好奇心、人を喜ばせたいという気持ち、経済の安定など、イノベーターに必要なこともまとめてあり、一般的な偉人伝というよりは、子ども向きビジネス書といった雰囲気は、新鮮であった。

 東芝未来科学館も紹介してあり、訪れたくなる。広がりという意味でも、面白い作品。

 

                

             書籍データ 船登惟希・シナリオ 如月謙一・漫画 Gakken 201507

| 15:38 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
後妻業

 大竹しのぶ主演で映画化されると聞き、読んでみることにした。

 

 もはや仏に近づいているのではないかと思っても良い年齢の女性が、さらに年上の男性を色がらみで掌握し、時には、殺人さえ絡み、財産を奪うという話。人間の欲望は、死ぬまで現役なのかと思いながら、その逞しさよりも、何か、人生の最後をそんな風に迎えてしまうことへ言葉にはならない寂しさを感じる。そんな事件が時々起き、そんな事件が報道される。

 目も眩むほど、美しいわけではない犯罪者たちの姿は、何か、得体のしれない闇を見せられているようで、憤りでも、あざけりでもない、かといって他人事とは思えない後味の悪さがある。

 

 「後妻業」とは何か。結婚相談所で、高齢者を高齢者が騙し、その遺産を食いつぶす家業だ。

 騙される爺には、世間的にはごく普通の家族がおり、世間的には豊かな生活をしている。その爺が、婆に言い寄られ、遺言を書き、殺される。したたかでありながら、大事な神経が欠落している婆と、丁々発止彼女を食い物にしている男たち。すべてが刹那的で、罪悪感のかけらもない。父親の財産を取り戻そうとする姉妹と、それに協力する弁護士、そしてその委託を受けた警察あがりの探偵は、結婚相談所を強請ることを考えている。

 

 最後は後味が悪い。

 悪人は消え、正義は勝利しない。誰も何も得をせず、消化しない事実だけがポツンと読者の前に残り、また時間が流れていくのを感じる。それがこの種の犯罪の真実なのだと思いつつも、なんとも言えない思いが残る。

 これが逃げないリアリティなのだろうと思う。

 

 本の感想として書くには余談なのだが、入り口が、映画かだったものだから、映画についても言及しておこう。

 映画でも、ラストは同じだろうか。

 このラストで、テロップなのだとすれば、俳優陣はとてつもない演技力を試される場になるに違いない。

 どうしても映画が見たくなった。楽しみである。

 

 

                                                 

                                                書籍データ 黒川博行 文藝春秋 201408 

| 15:23 | 一般書 | comments(0) | trackbacks(0) |
怒り 上・下
 世間が忘れ去ろうとしている未解決事件。殺人現場に残された「怒」の血文字。
 警察は、世間が忘れ去らないためにメディアに訴え、手がかりを求める。

 その中で揺れ動く人と人の関わり。

 大手企業に勤めるゲイの優馬。彼の家に転がり込んでいる直人がその犯人なのか。
 知的ボーダーと言われ、家出して風俗に勤めていた娘を持つ中小企業の社長の家の従業員田代。真面目なだけが取り柄で、娘のすべてを知っていながら一緒に暮らすと言ったこの男が犯人なのか。
 ふしだらな母が、男関係でしくじる度に、夜逃げのような転居を繰り返す母娘が流れ着いた沖縄。そこで知り合ったバックパッカーの田中と名乗る男。彼が、犯人なのか。

 人が人を信じるのは、人が人を好きになるのは、いったい、どんな感情が動くのか。
 そして人が人を疑い、人を正義の名の下で裏切るのは、いったい、どんな感情が動くのか。
 訳アリだとわかっていたはずの相手。殺人犯に似ているというシグナルを受け取ってしまった時、人は何を疑い、どう行動すべきなのか。

 人を疑う時、人は自分の弱さを突きつけられる。ゲイであることを公表しながら、家族や幼馴染には知られたくないと思う弱さ。自分と娘の期待できそうにない未来。大好きなあの子を助けられなかったふがいなさ。

 するりとそこの入り込むように、闇は訪れる。
 向かい合っていたはずの人間が知らない何かに見える。

 狂気が、殺人鬼によって「怒り」と名付けられ、大衆によって「怒り」と認識された時、その得体のしれないエネルギーは、薄っぺらい事件や世相になる。
 その中で、確かに生きた、そして試された人々の気持ちをよそに・・・。

 そんな物語である。



         

               書籍データ 吉田修一 中公文庫 201601
| 18:16 | 一般書 | comments(0) | trackbacks(0) |
ここは妖怪おたすけ委員会 〕轍スーパースターズがやってきた☆
  好みの絵柄なら仕方もないが、そうでもないのに、最近、表紙を見てピンとくることがある。
 この本はいいぞ・・・と、なんだか占い師にでもなった気分である。良い本は、なぜか表紙に力がある。何がと言われれば困るのだけれど、文字の力が、画家に良い絵を描かせ、それが読者にも伝わるのかもしれないと思う。
 
 なんだかピンときてしまった本。

 五年生のみずきは、誕生日にほしいものを問われ、亡きおじいちゃんがつかっていた、古びた離れを両親にねだる。みずきは、妖怪をこの上なく愛していて、民俗学の学者だったおじいちゃんの書物などがそのままにしてある離れに魅力を感じていたのだ。
 そして、そこでみたものは、コスプレかと見紛う妖怪たちの姿。妖怪たちも現代風に自分たちをアレンジし、または代替わりし、浮世の辛さを感じながら、信じてもらえない生きにくい現代を生き抜いていたのだった。
 妖怪スーパースターズの副題通り、有名な妖怪たちの登場に心躍らせるみずき。
 
 そんななか、神社の御神木に、クラスメイトの名前が書かれ、釘で打ち付けられているぬいぐるみが発見される。そして、そのクラスメイトは体調が悪くなり学校を休んでいるというのだ。
 犯人は誰なのか?
 お洒落な女の子グループで、いつも、利用されているような立場で、みずきが気になっていた柳田さんの名前が犯人としてあがる。ほっておけなくなった、みずきは、天井下がりに調査を依頼するのだが・・・。

 妖怪オタクの変わり者の女の子みずき。ちょっとチャラい天邪鬼に、ツンデレスイーツ男子の妖太。こう書いてしまうと、子どもの好きそうなエンターテイメントとくくられてしまいそうだが、そんなことを言わせない、説得力がこの本にはある。人の不安や心の隙が妖怪をうみだすのだとすれば、妖怪だって現代の世相を反映する。SNSで自分の存在をアピールしてたっていいはずだ。小さな発見と、存在感に身をゆだねながら物語を読み進めれば、あらすじとキャラクターの紹介では、よくある子どもの好きな妖怪話としか思えないであろうこの本に、好きで好きでたまらない高揚を感じるのだ。
 不思議の世界を一括りにせず、「妖怪」「怨霊」「ネオ・クリーチャー」としっかり分類しながら物語は進んでいく。
 
 この物語がなぜ、こんなに私の気持ちをとらえるのだろうと考えて、導かれる言葉を書くと、やっぱり陳腐な表現になってしまう。お互いへの愛と尊敬が、この本には溢れているからなのだと思う。

 みずきのおじいちゃんは、民俗学の学者で、その内向きの仕事に反発を感じていたらしいママは、ファッション雑誌の編集者。そのパートナーであるパパは銀行員だ。羨ましさを含めた否定も肯定もあって、こういう職業と興味をもった人たちが家族として成り立っている。その家の娘であるみずきは、妖怪が大好きだ。家族の設定そのものが、設定をこえて、人のかかわりの含みを感じさせる。

・中からカギをかけないこと
・こもりっきりにならないこと
・たまには、鏡で自分の顔をみること
 
 これは、離れのカギをもらったみずきへの、パパからの言葉だ。
 人との付き合いというものは、この三つのアドバイスに尽きるのかもしれない。

 人と人とか関われば、心が動き、隙や光、そして影がうまれる。そこに妖怪は棲みつくのだろう。

 みずきと妖怪の関係は始まったばかりだ。11歳とはそんな年齢かもしれないと思いつつ、心が動くからできる模様を、どう妖怪たちと分かち合っていくのか。
 今後のシリーズが楽しみである。


  

                                                           

                                    書籍データ 角川つばさ文庫 宮下恵茉・作 いちごイチエ・絵 201602 
| 17:25 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
半沢直樹
 2013年の大ヒットドラマ。



 メガバンクの行員・半沢直樹(堺雅人)を描く物語。



 「やられたらやり返す! 倍返しだ! ! 」のフレーズが流行語となり、倍返し饅頭なるものが売り出される!?ほどの過熱ぶり。なんとなく興味はあったのだが、最初の方を見のがしたこともあり、見ないまま現在に至る。



  流行語のイメージから、勧善懲悪的な痛快ドラマだと思っていたが、原作の『オレたちバブル入行組』( http://yukareview.jugem.jp/?eid=687 )を読み、舞台は銀行、そうそう一筋縄ではいかない物語を、どうテレビドラマとして料理しているのか興味津々だった。



さて、本日は、朝から一気にDVDで全話を見た。



バブル経済末期に銀行に入行した半沢直樹は、現在融資課長。



 夢を持って入行した世代ではあるが、25年経過した現在は、行内で中心的な役割を担うようになり、そろそろラインか否かで出向していく同期もいる。



 西大阪スチールという会社に、5億円の融資契約を取り付けることになるが、支店長の浅野(石丸幹二)から強引な指示と、新規融資にも関わらず「無担保」という無謀さを危ぶみながらも、一度進みだした組織の歯車は、半沢にも制止できず、融資は実行されてしまう。融資によって営業目標を達成した大阪西支店は、名誉ある最優良店舗賞を初受賞。



融資からたった3か月で、西大阪スチールはあっけなく倒産した。発覚する粉飾決算。



合併でメガバンクになったはいいが、「旧・産業中央銀行」出身者、「旧・東京第一銀行出身者」の派閥に分かれ出身会社で足を引っ張り合う権力闘争。



 そんな中、出世に執念を燃やす浅野支店長は、今回の失態の全責任を半沢直樹一人に負わせようと画策するのだった。



 いかに、債権を回収するのか。社内の派閥争いと人事の枠組みをのなかで、どう生き延び、人間らしい友情を築き、維持していくのか。



 同期のキャラクターも、飄々と組織に順応しているように見せて強い信念を持つ渡真利忍(及川光博)と、強い正義感があだになり、心の病を抱えて出向させられる近藤直弼(滝藤賢一)とリアリティがある。



 半沢直樹の正義感、融資がらみで死を選ばざるをえなかった中小企業の社長である父の復讐と、バンカーとして恥じない生き方をしたいという思いは、大企業組織と個人の関係を図式的にうまく描いているように思う。愛と憎しみの複雑なる日常化である。



 面白いのは、正義は役職、場所に関わらず、貫くか、貫けないかという視点で描かれているのだが、悪には、しっかりとランク付けがされていることだ。薄汚い目先の欲と保身にに振り回される悪人と、ぽっかりと底の見えない暗闇を感じる悪とその大きさに見合う許容量を持った悪人。

 

 悪で、魅力的だったのは、やはり「旧・産業中央銀行」出身の大和田(香川照之)



 半沢直樹を面白がり、少し怖がり、権力と立場を利用した悪にどっぷりつかっているクセに、不思議な威厳と余裕を持っている。どこか他人事のように自分の人生をみている感じも含め、大きな組織の中のこういう得体のしれない怖さの象徴的存在なのだと思う。



 「旧・東京第一銀行出身者」の中野渡頭取(北大路欣也)は、すべてを見通している。派閥を超え、人間を掌握している、企業の良心のように見せかけながら最後に、やってくれる。



 昨年亡くなった父が、半沢直樹は面白いから見た方がいいと私に言った。



 最後の、人事、あれがサラリーマンの現実なんだと。



 父自身、サラリーマンとして生きていく中で、少なからず立ち合い、経験したことなのだろう。

 それが面白いと、それが現実なのだと矛盾する言葉で表現する物語の結末こそが、この物語の魅力なのだと思う。



 正義は、成功には直結しない。



 だけど、人は正義と、成功を望む。



 そのバランスのせめぎ合いこそが人生なのだ。



 その現実を突きつけながらも、このドラマは諦めではなく、熱と怒りでその不条理を語っている魅力があるのだと思う。










    



           2013年 TBS
| 23:47 | テレビ | comments(0) | trackbacks(0) |
アクトン ベイビー−Act on BABY− 全三巻
 高校演劇の話である。

 早乙女ひろみ(男子)は、高校入学を機に、おとなしいがゆえに出会う理不尽なことを払拭しようと妄想を繰り返している。空想の中での自分は、はっきりモノが言え、自由に輝いているのに現実社会ではなかなかそうはいかない。

 偶然、隣の席になった、武上あきら(女子)は、なかなかの美女なのに、ひろみと奇妙な距離をとろうとする。その不思議な距離感に惹かれ、ひろみは、あきらの姿を追いかけているのだった。

 そこで出会った演劇。

 ちょっと変わった先輩と、あきらの存在に引き込まれ、ひろみは演劇部に入部することになる。

 漫画のセリフをグループで朗読し、通行人に訴えかけるストリートパフォーマンス。お化け屋敷での実演で、観客を、舞台の下の一括りの観客という存在から、ひとりひとりの存在に分けて実感する訓練。

 今を生きる高校生たちの、舞台への思いを描く。

 この物語にあるのは「今」だけだ。将来の夢にも、自己表現にも大きく踏み出すことはない。そのことが、物語にリアリティと解放感をもたらしている。高校生という狭い世界、されど、大きな時間と、強い自我、変えたいという願い、一緒にいたい、あの場所にいたいという思い。高校生という時代は、そういう時代ではなかったか。

 開演の時間、舞台の上にいれば、なんだってできる。

 幕を開けよう。

 あがき続けながらも、何かを演じ、自分の何かを変化させようとする高校生たちの物語。



 天才肌の鳥海潤の登場で、少し違う動きがありそうなところで終わってしまったのは少し残念。漫画の宿命というところか。うまく完結させているので全三巻違和感はないけれど、もう少し読んでいたかったのいうのが正直な感想。








                  

              書籍データ 秋田書店 高田桂 201411〜201506
| 22:57 | 漫画 | comments(0) | trackbacks(0) |
あなたこそたからもの けんぽうのえほん
 憲法の絵本である。
 憲法の条文を子ども向きにやさしく説明した本でも、可愛い挿絵で導入しやすくした本でもない。
 「憲法」というものの根幹と存在を平易な言葉で説き、そして間違いなく芸術的「絵本」として描かれている。
 学生時代、憲法前文を暗記した記憶がある人も多いだろうし、憲法9条の意味は、教えられなくてもわかっているという人は多いだろう。しかし、私は、憲法がある意味を、自分に及ぼす力を、これほど端的に語り掛けられたことがない。
 この絵本は、理解出来るを超えて、静かに、冷静に、そして理論的に、胸に迫る方法で、憲法について描いているのである。
 印象的な表現が並ぶ。

 「つよくて、ちからのあるひとたちにつけたブレーキ
  それが、けんぽう。いちばんつよいルール。」

 「ひとびとは、たたかってきた。
  そして、けんぽうをてにいれた。」


  我々を「ひとりもみすてない」憲法を、なぜ我々は、理屈の世界に追いやろうとしているのか?

  この絵本を読んで、そんなことを感じた。
  
  ぼんやりとした美しい色が、花へと変わる。その花たちが顔と身体を持つ、そして、それぞれの価値観で、それぞれに動き出し、戦争や見えない大人の論理といった灰色の世界にも目を凝らしだす。

  文と絵で私たちは憲法を、体感する。

  「わすれないで」と、絵本は言う。
  知らなかったかもしれないと私は思った。
 
 

  

              
          書籍データ 大月書店 いとうまこと・ぶん たるいしまこ・え 201505
| 21:59 | 絵本 | comments(0) | trackbacks(0) |
コケシちゃん
 スイスから体験入学生がやってくる。

 くるみたちは、ヨーロッパからの転入生に想像を膨らませる。

 しかし、やってきたのは、京ちゃん、おかっぱでコケシ顔の日本人そのものの容姿だった。



 自己主張がはっきりしていて、いつも冷静な京ちゃんは、くるみを戸惑わせるばかりだ。

 出井くんは、いつも正しいような顔をしていると、京ちゃんが気に入らないらしく、なんでもかんでも突っかかって来る。

 くるみは、そんな出井くんも苦手。



 自分との違和感、そしてだからこそ気になるという感情。

 母を失った京ちゃんと、母に手間暇かけられることに飢えている出井くん。親への思いを、共通言語にみんなの根っこがつながっていく。



 日本では学校給食や掃除をなぜ子どもがするのだろうかという京ちゃんの疑問や、異文化を教えられることが、日本のことを悪く言われているきがして黙り込むくるみの気持ちなど、国際交流の第一歩で経験する、差別心にも似た摩擦を丁寧に描きながらも、語りすぎない物語が心地よい。

 自分の物語を抱えた登場人物の集合体が、一緒に何かをやりとげ、一緒にいることを選択していく物語だ。

  国際交流とか平等とか、子どもたちはこうやって、日常の中で、理論を超えた確かな何かをつかみ取っていくのだなと、 個人とは、集団とは、そういうものだと思わせてくれる。



 何よりも、日本の小学校のどこか茫洋とした空気のなかに、張り詰めた存在の京ちゃん・・・コケシちゃんが闊歩する緊張感が見事に描かれている。

 その緊張感が、理解できた喜びや乗り越えられた達成感に変わった時、それが友だちになれたということなのだということなのだと胸に迫るものがある。



 スイスの言語地域がでてくるのだけれど、くるみが最後、京ちゃんの手紙に書いたのは英語だ。

 このあたりが心憎い。コミュニケーションは、身近なところから、とにかく始めることに意味があるという信念を感じて爽快だった。

 景色を指定して絵葉書送ってこいって言われてみたいなとか思って、これは、最後にルガーノ湖の絵葉書があるはずと、裏表紙を探してみたけれどなかった。ちょっと落胆しながら、ルガーノ湖に思いを馳せる。

 カバーをめくったら、みんなで描いた絵があった。

私のがっかりも、素敵な絵も物語の開放感につながっている。

 何もかもこれで完結ではなく、ここから始まるように仕掛けてあるのだと思える物語である。




                  

               書籍データ 佐藤まどか 作 木村いこ 絵 フレーベル館 201411
| 21:35 | 児童文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
あめ・のち・ともだち
 さて、どこから評したものかと思う。

 

 ちょっと怖いと思っていたクラスメート、ゴウくんは、トモキの肩の傷を、カッコいいと言った。

 なんの、深い意味のない、転んでできた肩の傷。ドジでも、気持ち悪いでもなく、フォーレンジャーのイナズママークみたいでカッコいいと目を輝かせるゴウくんがいた。

 そこから急に近くなる二人。

 雨の日でも、ずっとトモキが来るまで公園で待っていたゴウくん。

 一緒に、新宿のフォーレンジャーの店に行こうと誘ってくれたゴウくん。

 だけど、ゴウくんは引っ越してしまう。トモキが会いたいと言っても、親たちは動いてくれない。

 やっと、やっとの思いで、トモキの誕生日にゴウくんがやってくることになった。しかし、その朝、ゴウくんのうちの車が動かなくなって・・・。

 飛び出したゴウくんはどこにいるのか? トモキとゴウくんは会えるのか?



 二人の切実な思いにくらべ、なんと親たちの呑気なことか。

 子どもと、親の時間の流れる速度の違いが見事に描かれている。

 

 そんな風に、思い通りにならないことがたくさんあって、子どもの時代というのは、親とは違う永遠の長さがあったなぁと思う。大きな理由もないけれど、ゴウくんとトモキの、闇雲に相手のことが好きで、凄いなぁと思っていて、友だちと言える純粋さが眩しい物語だ。



 難点もある。

 雨の中駆け寄ってきたゴウくん。新宿へのフォーレンジャーツアーはどうなったのか。

 尻切れトンボの場面転換に少し戸惑う。



 しかし、この粗さが、この作者のもつ魅力の一つとするならば、よくもまぁ、こんな状態で商業出版してもらったなと愉快な気分になる。この粗さのまま、この物語の飛躍を、もっと確かな魅力にできないものだろうかと思ったり、新人作家の処女作は、このくらいの勢いと欠点があった方が面白いと思ったり。



 実は、冒頭、どこから評したものかと言ったのにはわけがある。

 以前、この作家の、生原稿を読んだことがある。

 荒削りで、場面が飛躍し、なんだかヤッツケ感さえあるのに、恐ろしいほど魅力的だった。

 こんな作家が、自分の魅力を意識した作品を完成させてきたら、面白いことになるぞと心が躍ったことを思い出す。

 

 その作家が、とうとう出てきたのだ。

 それも、その欠点をそのままに、卵の殻を突き破って出てきたのだ。

 こんなにうれしいことはない。



 この作家が、自分の魅力を、欠点ではなく自分の武器にできる日がくるのかは、神のみぞ知る世界であろうが、とにかく、作家としての誕生を祝いたい。



  トモキとゴウくんが、明日を信じ、未来に起こるはずのことに何の疑いもなく心躍らせているように。

  私も、なんだかそんな気分である。




  



                 



              書籍データ 国土社 北原未夏子 作 市居みか 絵 201506
| 23:36 | 児童文学 | comments(2) | trackbacks(0) |
へぇこいたのだれだ?
 読書ボランティアの方から紹介してもらった絵本。
 確かに、声にだして、子どもの反応をライブに感じて楽しいセッション型の絵本であろう。

 暗闇の中、鬼が三人。
 そこに響く音 「ぷ〜う」
 くさいぞ、くさいぞ。
 犯人は誰だ。

 「へぇ」の視覚化が何とも言えない。
 犯人は、想像通りだけど、文字通り「疑心暗鬼」の世界である。



                  
            書籍データ くもん出版 平田昌広・さく 野村たかあき・え 201412
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| 07:56 | 絵本 | comments(0) | trackbacks(0) |